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インタビュー 岡野奏恵「起源のカケラ」

3月20日からは、岡野奏恵さんの彫刻作品がCOYAMAに並びます。植物や小さな生きものの営みや造形を石で象った彼女の作品は、強い存在感を持っています。

岡野さんに、石やモチーフへの想いなどを伺いました。

岡野奏恵「起源のカケラ」 2021年3月20日~4月18日

自身の初めての個展。「はじまりのかたちってなんだろう?」をテーマに制作された、平面と立体を行き来する作品が並びます。

◯圧倒的な存在感を持つ石に、不確定な生きものの営みを表現する。

「公園や緑道が整備され、また一方で田畑も残る神奈川県横浜市の新興住宅地に育ちました。時間を見つけては母に頼みスケッチブック片手に散歩へ行き、そこで発見した、気になる生きものや植物を片っ端から描いていました。カエルやトカゲ、虫などの小動物は、捕まえて飼育することも。小さな生きものも絵を描くことも、本当に好きでした。そのころから、彼らは身近な存在であると同時にどこか遠い存在のようにも思え、生きものに対しての『なぜこんな形なんだろう、なぜこういう生き方をしているんだろう』というような疑問を持っています。同時に、私達が見ている世界の一部に確実に存在しているけれども実は見えていない彼らの存在や営みというのが、テーマとしてずっとあります」

彫刻家である岡野奏恵さんは、植物や小さな生きものをモチーフに、大理石を彫って作品を生み出しています。大理石は、岡野さんにとって「地球の長い年月で有機物が堆積してできたもの」であり、「人とは違う時間軸で成長したもの」。生きものの営みや造形といった不確かなものを石に彫ることで、確かな存在にしたいという想いがあるそうです。

「自分たちとは違う時間軸のものが置かれると、存在感がすごいですよね。石には蓄積された年月なども含んだ重みがあって、確実に存在している。制作においては、不確かなものを追っているという感覚があるので、圧倒的に存在している物質に落としこむことに強さを手に入れられる。そういうのは考えています」

 

◯生きものと人間は、お互いに「不思議な生きもの」と思っているかもしれない。

表現の方法として彫刻を選んだのは、鑑賞者と同じ空間に同居させるものだから。

「例えば2トンの重さの石を浮かせることは簡単にできないですよね。嘘がつけない世界だからこそできる表現があると思っています」

その作品は、動植物という身近なモチーフでありながら、不思議な存在感を持っています。白色や赤色、黒色の大理石にかたどられた動物の形にはしなやかさと躍動感があるのに顔がなく、植物の形はやや無機質です。

「彼らの成長に必要だったその形は、不思議なもののように感じます。彼らと向き合うなかで、『本当に彼らと人は進化の過程で同じ道を歩んでいたのか』『彼らは人とは違う場所にいる』という考えも浮かびます。でも一方で、私が彼らを不思議なものを見ていると思うように、彼らも人間のことを『不思議な生きもの』だと思っているかもしれない。焦点が合わないままに観察し合っているような関係性に匿名性を感じ、顔をつくらない存在にしています」

 

◯絶対に変わらないものに、世界とつながるヒントがある。

岡野さんの最近の大きな発見は、2020年の初夏、新型コロナウイルスで社会に大きな変化が訪れたころのこと。5年前から参加している野外展示で設置場所を探していたところ、とてつもない量のきのこが群生している場所を見つけたそうです。

「過去に何度も通っていた場所なのに初めて見る光景でした。それが翌週、『どうなったかな』と思い同じ場所を訪ねたら、あれだけたくさん生えていたのが跡形もなくなっていました。大量のきのこの発現と消失を目の当たりにして、人々が変化した社会を生きる傍らでは、生きものたちはいつもと変わらない日々を営んでいるのだと、当たり前のことなんですが改めて気づきました。世界の稜線が不明瞭になった今こそ、脈々と続いている変わらないものを探求したい。そこに、現代を生きる私たちが世界とつながるヒントがあると信じています」

◯岡野奏恵×COYAMAから、何かが生まれる。

今回の個展のテーマである「はじまりのかたちってなんだろう?」は、ドローイングがきっかけとなりました。

「なんとなく気になっている形を、大地の割れ目をイメージしながらドローイングしていたら、『きのこみたい』と言われたときがありました。大地は地球の始まりからあったものだし、粘菌も原始からある生きものの一種なので、わたし自身もそれを聞いて納得して。それを起点に、『はじまりのかたちってなんだろう?』と考えるようになったんです」

最後に、COYAMAを選んだ理由を聞きました。

「COYAMAはカフェと本とギャラリー3つの軸でやっています。この3つは、なくても生活できるかもしれないけれど、あったら毎日が楽しくなるもの。アートも同じように、なくても困らないかもしれないけど、あると楽しく発見があるものです。わたしが見つけたきのこじゃないですが、わたしの作品も皆さんの日常にひょっこり顔を出す存在になったら、と思います。自分の作品とCOYAMAのコラボレーションが生まれるのを楽しみにしています」

 

岡野 奏恵 

1988年神奈川県生まれ。2014年多摩美術大学美術学部彫刻学科卒業。現在、ギャラリーでの企画展や、人と里山の共生を目的とした野外展への出品および運営などを筆頭に、精力的に活動中。

https://kanaeokano.com/

 

 

Written by 松本麻美

 

過去のインタビュー

第1回 | 2021年1月 kiritsuaiko

第2回 | 2021年2月 松下美沙