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インタビュー Yuhei Paint

Yuhei Paint「根も葉も展」

高橋佑平さんの作品展。107日からタバネルブックス(東京都大田区)にて葉物野菜、
116日からのCOYAMAでは根菜のイラストを展示します。展示の詳細はこちら>

 

作家活動のスタートは、パンツを描いたシリーズ 

Yuhei Paint」として活動中の高橋さんは、家やイス、棚、クリップ、ピッチャー、ケーキ、本など、
生活の身の回りにあるものを描いています。モチーフを構成するのは、直線や円などの図形。
作品は一見シンプルですが、よくよく見ると写実的ではありません。不思議な遠近感があったり、
デフォルメされていたりしているのです。

ちょっと変わっているような、でも懐かしいような……こんな作風は、どのように生まれたのでしょうか?

「直線と円だけで、あらゆる形のパンツを描いた『パンツシリーズ』が原点となっています。
描き始めたのは、201912月。筆でなんとなく線と円を組み合わせて描いてみたら、パンツを抽象化したような
形になったんです。次も同じように円を二つ描いて、線をつないだら、今度は違う角度から見たパンツが描けた。
この発見が嬉しくて、次は足を曲げてみようかなとかいろいろパターンを生み出していきました。
いま考えると実験のようなものだったかもしれません」

高橋さんが最近活発に制作しているシリーズは、「本を描く」シリーズ。表紙に描かれた細かな文字も省かず、
すべてをまるっと描写。目を凝らせば読めるという、味わいのあることもされています。きっかけは、たまたま家にあった本。

「妻が所有する、中国で開催された隈研吾さんの『建築建築展』の図録が家の本棚にあって。
タイトル文字のフォントと装丁、厚み、重さがかっこいいなと思い描いてみたのが始まりでした。
他には、無印良品のアーカイブ本、世界の国旗を集めた本なども描きました」

いつかはパンツシリーズと本のシリーズも展示したい、と高橋さん。夢はどんどん広がります。

 

デザインの仕事も手がける

作家としての制作を進めるかたわらで、デザインの仕事も手がけられています。
パン屋を始める友人や
カフェ定食屋を開業する友人に依頼され、ロゴやのれん、名刺を制作。
店名や図柄のほとんどが手描きで、高橋さんの手描きに対するこだわりが感じられます。

「文字が好き」という高橋さんは、文字を「文字」としてではなく「絵の一部」として描いています。
大学在学時には「hage」の4文字をそれぞれヘアスタイルのように描いたり、デザインの仕事では
YOYOGI」という文字を木に見立てたりといった作品を生み出しました。

 

描きながら、絵を再構成

作品のモチーフは、いずれも自身が興味を持ったものや惹かれたもの。
それを描くという行為について、高橋さんは独特な表現を使います。

「描くということは、モチーフの雰囲気・佇まいを、紙やパネルへ残してみてる、みたいな感覚ですね。
例外もたまにありますが、身近な人工物を選ぶ事が多いと思います」

実際に描くときは、どのような工程なのでしょうか?

「モチーフを決めた後は、よく見るんですが、一方であんまり見ないようにもしています笑。
例えばクリップを描く時は、みんなが想像するクリップの形状とか、どんなクリップがあったらいいかなとか、
考えながら見るんです。でも観察しすぎると描けなくなってしまうことがあるので、注意しています」

「さて、描くぞ! という段階に入ったら、割と作業的です。まずは、フリーハンドもしくは定規やコンパスで線を引いてみる。
少しひねりを効かせたいという気持ちもあって、写実性にはこだわりません。線が長かったり角度が甘かったりしても、
全体のバランスを見て『自分自身が気持ちいいかどうか』『雰囲気を写せているか』を探りながら判断するんです」

ちなみに、描き始めの位置や構図を最初に決めないとのこと。

「途中で構図がおかしいなと思っても、一度直さないで進めちゃいます。描き進めていくうちに、
もっとおもしろい線が出てくるかもしれないので。全部自分の感覚任せですが、
『こっちのほうがいい、いやこっちにしよう』とその繰り返しです」

アナログな手法に強いこだわりを持ちます。その際たるものが、シルクスクリーンによる作品制作です。
鉛筆とアクリル絵の具で描いた原画をPCへと取り込み、再構成して製版。それを1枚1枚手刷りすることで、
新しい価値を見つけようとしている。

「ズレやカスレなどのアクシデントも、作品の味として残したいんです」

今回の展示「根も葉も」に出展する作品はもちろん、DMも作家が一枚ずつ手刷りをしています。
こうした選択からもその想いが伝わってきます。

 

引き出しを増やす、野菜へのチャレンジ

これまで自然物を描くことは避けてきたという高橋さん。
今回の展示は作品の引き出しを増やすためのチャレンジだそうです。

「植物や野菜などの自然物は、結局どんな絵よりも美しいしかっこいいんですよね。
これまでにおでんの大根など、調理された野菜が気持ちよく描けた事はあったのですが、
植物や野菜そのものを描いたところで勝てっこないという、コンプレックスがあったんです」

ところが最近、木をモチーフに描くという依頼を立て続けに受け、この依頼が高橋さんのスイッチとなりました。

「依頼を受けたからにはとやってみるものの、その魅力を表現するにはやっぱり難しいと感じていて……
でも、これを機にやってみようか! と決意しました。自分がどんなふうに植物のエネルギーを描けるのか、
はたしておもしろくすることができるのか、いま戦っているところなんです」

インタビュー中に印象的だったのが、「どこで誰と出会うかわからないし何があるかわからないので、
やれることを精一杯やるだけ」という言葉。
どんなことがあろうとも、持ち前の遊び心と自由さで、楽しまれることでしょう。

「根も葉も」では、作品を展示するほか、ポストカードやマイバッグ、手ぬぐい、カレンダーなどの
オリジナルグッズを販売する予定です。タバネルブックスさんとCOYAMAの両会場に来場した人には、ノベルティも準備中。

葉物野菜を中心とした作品を展示する「葉」のタバネルブックス、根菜を中心とした作品の「根」のCOYAMA
2つの会場をめぐることで、高橋さんの作品の魅力と、野菜の美しさを、まるっと感じることができるはずです。

 

Yuhei paint Inc.
イラストレーター 髙橋 佑平

1980年生まれ
2004年多摩美術大学卒業
2020年創作活動を開始

生活に息づくものや文字をモチーフに、主に平面作品を制作する。
鉛筆、アクリル絵の具、シルクスクリーンを使用。

HPhttps://www.yuheipaint.com/

タバネルブックスへのアクセスはこちら
https://tabanerubooks.stores.jp/

 

Written by 松本麻美

 

過去のインタビュー

第1回 | 2021年1月 kiritsuaiko

第2回 | 2021年2月 松下美沙

第3回 | 2021年3月 岡野奏恵

第4回 | 2021年5月 イノウエエリコ

第5回 | 2021年7月 高橋ヤヒロ

第6回 | 2021年8月 吉永 蛍