twitter instagram mail shop

インタビュー 松下美沙 ことば展「まわる」

COYAMAのギャラリーにて、2月7日からは、言葉を扱う松下美沙さんの展示を行います。

松下さんは自身の頭に思い浮かんだ情景を、言葉を使って詩や物語として表現。読む人のその時の気分や場所で感じるものが変わるという作品を生み出しています。

松下さんが言葉に改めて出会ったのは、映像の学校に在学している時だったそうです。

脚本の授業で「松下さんは文章を書いたほうがいいね」と入れたことをきっかけに、「ことば」の道の歩み始めた松下さん。同級生に初めて自身の作品を読んでもらい、自分のイメージしている世界が言葉だけでこんなにも伝わるのか、と驚いたと言います。

そんな松下さんは、言葉とどんな関係性を結んでいるのでしょうか。インタビューしました。

 

松下美沙 ことば展「まわる」 2021年2月13日(土)~2月28日(日)

詩や物語など自身の言葉で表現した作品を、自ら製本して展示。今回は、新作の「まわる」も追加した約50冊の本が並ぶ予定です。

 

◯数ある表現方法のなかで、言葉が1番自由。

――松下さんにとって、言葉とはどのようなものなのでしょうか?

言葉を考える時は、頭よりも体を使っています。つまりわたしは、言葉は「体の一部」と捉えていて、そういうものであって欲しいという想いもあるんですが……感触とか匂いとかをもうちょっとなまなましく、身体的に感じられるほうがいいなと思いながら作品を書いていますね。「この作品はダンスっぽいよね」と人に言われたりするのは、そういう理由もあるかもしれません。

言葉を書き始める時は、詩でも物語でも、頭に1つの映像を浮かべるんです。例えば、わたしが子どもの頃に歩いた帰り道などの情景がポンと思い浮かんだら、その伝え方を探す作業に入ります。自分が実際に感じたことをどう言葉にしようかと昔の記憶や感覚をすくう時に、その時の感情や体が受けた影響を引っ張り出しています。そう考えると、やっぱり身体的ですね笑。

――展示の相談をする際には“「ことば」と「ひと」”というフレーズを寄せていただいてますよね。

わたしにとっての言葉は、身体表現的に人とつながるツールなんです。会話というよりも、握手や抱き合うなどくらいの感覚であってほしい。ダンスでは、重力や重心をつかって相手と体をあずけ合ったり支え合ったりするコンタクト(身体の接触と関係性)というワークがあるんですが、距離感も含めて、読んでいる人と言葉がそういう感覚になってくれたらいいなと思います。

――言葉の可能性をいかに引き出すか、というところでしょうか。

そうですね。演劇や映画や絵画などいろんな表現方法がありますが、言葉が1番自由だと思っています。例えば「きれいな花」という一行から思い浮かべる花は、色も形もみんな違う。さらに思い浮かべた花が違えば、その先に続く文章からも、その人だけの世界ができあがってきます。そんな自由なことってある? と思うし、すごいと思います。言葉、大好きです。

作品を読んでくれた人の感想を聞くと、大まかには同じでもよくよく聞くと違ったりする。でも、どれも正解。そんな言葉の魅力を損なわないように、なるべく読み手の想像性に任せて自由にイメージできるような書き方をするようにしています。

 

 

◯言葉は場所によって流れ密集し回転する。

――書かれた作品は、ご自身で製本されているんですよね。

製本する時には表紙の色や紙なども自分で選んでいます。作品のタイトルは表に印刷していません。色や大きさなどから、その時にパッと手に取ったものを好きに読んでもらえればと思います。もし文章に苦手意識があったとしても、手に取った時の手触りやページを開いた時の印象から入ってもらってもいいのかな。

これまでの展示は、必ずカフェ・ギャラリーで行っているんですが、それは自身のペースで作品を読んでほしいと考えているからです。カフェで過ごす1時間や2時間で、ちらっと見てもらえたらいいなって。

――先程、言葉の可能性や自由について話しましたが、作品から受ける印象が読む時期によって変わったという方もいらっしゃるのでしょうか?

うですね。同じ本を半年ぶりに読んだ人から「この前と受ける印象がぜんぜん違う」と言われたこともあります。その人が置かれている状況や生活環境から受ける影響が違うから捉え方が変わるんだと思います。

いろいろな場所で展示してきたなかで、読んでいる人の様子や感想から気づいたんですが、作品そのものも空間の影響も受けるんです。例えば海の近くで展示をした時には、言葉が流れていってしまう。山では、言葉が密集して留まるし、都会の人の出入りが激しい場所だと、言葉が回転していく感じがします。友人にも「ここは言葉が内面まで響いてくる」とか「ここにいると頭に入ってこない」とか言われました。

――COYAMAでは50冊ほど展示してくださるとか。作品をどんな風に受け取ってもらえるのか楽しみですね。

たくさん持っていくと思います笑。わたしの展示は自由に手にとってもいい展示なので、とにかく感触や見た目だけでも楽しんでもらえたらいいなぁと思っています。言葉から言葉を連想しているような文章もあったりして、いろんな言葉の可能性を探している実験的な作品が多いので、「おもしろい」と思える作品に出会っていただけたら嬉しいです。

 

Written by 松本麻美

 

過去のインタビュー

第1回 | 2021年1月 kiritsuaiko