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「潑 hachi -2022-」

潑 個展「潑 hachi -2022-」

115日(土)~20日(日)に展示を予定しているイラストレーターの潑(はち)さんは、202110月に初めての個展をCOYAMAで開催されました。

前回のインタビュー(こちら>>からお読みいただけす)では自身の豊かな発想についてうかがいましたが、今回聞いたのは、前回の展示の感想と制作のスタイルです。
話すうちに「飽きっぽさ」「楽しさ」がキーワードとして浮かび上がってきました。

昨年の展示がきっかけとなった新しい挑戦

「昨年の個展は、とてもいい経験になりました。新型コロナウイルス感染症の拡大のさなかで、会えなくなってしまった人たちに
会いたいというのも個展の開催を決めた動機のひとつだったんです。会期中に友人や知人も呼んで、
いろいろな人がCOYAMAに集まってくれたことがまず、とても幸せでした」

当時の展示では、暑さも過ぎて秋の落ち着いた気候を押しのけるほどにキラキラパチパチとした作品がCOYAMAギャラリーに並びました。

多くの方が来場されただけでなく、作品のカラフルさを大人にも子どもにも楽しんでもらえたのが嬉しい、と潑さん。
さらに、絵に描き込まれているモチーフを、子どもたちが見つけておもしろそうにしていたのを、ワクワクしながら見ていたといいます。

「『ここにこんなものがいるんだよ』というと『あー!』と反応してくれて、自分の絵を介して子どもたちと少し仲良くなれたのも良かったです」

子どもならではの型にはまらない奔放さや、物事を鋭く捉える視線。そんな感性が自身のなかに残っていることも、子どもたちとの交流から発見したそうです。

個展で得た収穫は、それだけではありません。会期を終えてからのこの一年、潑さんは新しいことに挑戦してきました。

そのひとつは、絵を構成する色の数を増やすこと。きっかけとなったのは、とある感想でした。

「私は青色を使うのがとても好きなんですが、個展に来てくれた友人から、青色を使うと私が前に出すぎると言われたんです」

それからは我慢して、青色を控えた制作に挑戦。

「自分の好きな色を使わないのはとても難しいです。でも、おそるおそる青色を使わないようにしたら、
以前よりも自分の好きな青色を表現できるようになりました」

色数を増やすためにもうひと工夫。制作時に、持っている絵の具を一覧できるようにしました。

「これまでは、絵の具を箱にボーンと入れて、使う色だけ取り出していたんです。でもそれだと上のほうに同じ色がとどまり続けるし、
お気に入りの色ばかり使うようになってしまいます。買い足す絵具も毎回同じ。これまで使ってこなかった色も取り入れようと思って、
毎回絵の具を広げるようにしました。そうすると自分が持っている色がひと目でわかって、色の組み合わせや使い方のバリエーションが増えました」

新しい挑戦は、さらに続きます。

「今回の個展に向けて、ちょっとやってみたんですよ」

と、話しだすのは、透明のジェッソ(下地用塗料)を使って、絵を立体的にする方法。

「私は月を描くのが好きなんですが、これまでは、白いジェッソの上に月を描いて終わりにしていました。
でも一度描いた月がどうしても納得いかなくて、その上に透明のジェッソを塗り重ねてボールペンで書き込んだり、
色をつけてみたんです。できあがってみたら、また違う雰囲気になっておもしろくなりました」

次々と挑戦しながらもまだスタイルは確立してないのだ、と表現の手段をどんどん広げていくのが、潑さんの強さのように感じます。

制作の重要な要素「飽きっぽさ」と「楽しさ」

こんなに多くのことに取り掛かるのは、どんな理由があるのでしょう?

「飽きっぽいので、どんどん試していかないと制作が続かないんだと思います」

そう答えながら、潑さんは笑います。

「月で使った透明のジェッソも実は、白いジェッソがなくなったのを機に他の表現を試してみようと調べてたら見つけたんです」

制作も同時進行。

「3つは同時に進めています。作品自体はそんなに大きくないので。でも途中で飽きちゃうと、たまに5つ6つになったり……
そうやってしばらく放置している間が冷却期間になって、久しぶりに見たときに手を入れたいところがパッとわかるんです。私にとってはちょうどいいですね」

飽きっぽさはどうやら、制作の重要な要素のようです。もうひとつ、大事なのは「楽しさ」。

「描いていて自分が楽しくないのは、嫌ですね。でも、あんまり単純に理解されたくはないので、ひねりを入れるクセもあります。
昨年描いた猫のUFOの作品で、背景に点と線でモールス信号でメッセージを書き込んだり、月の作品には映画『2001年宇宙の旅』に
登場するモノリスを描いて宇宙のミステリアスな雰囲気を加えたりしています。
じっくり見てわかる人にはわかるように表現する、ということに楽しみを見出しているんです」

世界を描く制作の次の展開

猫からUFOを連想し、月とモノリスを一緒に描くなど、ひとつの種から生まれたいくつもの想像を作品に表現する。
「対象を描くというよりも、その世界を描くこうとしている」という潑さんは今後、とてもとても大きい絵を、
モチーフを目の前にしながら描きたいと考えています。

「出身校であるセツ・モードセミナーでの授業に、千葉県・大原漁港まで出かけて海の絵を描くというのがありました。
その時に何も考えず、感じるがままに描いたのがとてもおもしろくって、これまでにない作品ができました。
それをまた、やりたいと考えています。普段は、心に響いたものや考えたことをノートに日常的に文字で書き留めて、
後で見返したときにその時の感情や思考を掘り起こし、想像を広げていますが、それだとものすごく頭を使うし、
作品の情報量も多くなります。約85cm×120cmA0サイズのキャンバスを持って海へ行き、海を見て感じたことを
そのままにぱっぱっぱっと絵の具を載せていくと、また違う意味で楽しい作品ができるはずです」

来年、2024年の個展もすでに検討してくださっている潑さんにとって、COYAMAでの展示は、1年間の制作の集大成。
予定を作って制作に追い込みをかけているから、大きい作品は自分を律することができるようになってからだそうですが、
今回の展示で、13点から17点の作品の出展を予定されています。

前回のようなキラキラパチパチとした作品が展示されるのか、はたまた、全く違う雰囲気の作品なのか、
プレゼントの箱を開ける前のようなワクワクで、胸がいっぱいです。

1982年神奈川県生まれ
セツ・モードセミナー卒業
小学館アカデミー銀座Sアトリエ在籍中

instagramhttps://www.instagram.com/mo.zzz_3/

Twitterhttps://twitter.com/10_HaChi_03

Casiéhttps://casie.jp/artists/135(アーティスト名:天窓屋)

 

Written by 松本麻美